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バスケ関連・書評・旅ログを中心に書いています。

【書評】スポーツ国家 アメリカ 民主主義と巨大ビジネスのはざまで

スポーツ国家 アメリ

鈴木透

 

著者の鈴木透氏は慶応大学でアメリカ文化研究しています。
本書は、著者のアメリカ文化研究者としての知識と、趣味のスポーツ観戦の知識が融合された本です。


アメリカ発祥のスポーツであるバスケ、野球、アメフトについて書かれているので、これらのスポーツが好きな人にはお勧めです。
ネタになる豆知識的なことも多いので、楽しく読める本です。


本書はアメリカ型スポーツが
「社会と相互に影響を与えながら、どのように発展してきたか」
について書かれています。
本書を読むことで、
「スポーツは時代を映し出す鏡である。」
ということの意味が理解できるでしょう。


アメリカ型競技ので代表的なバスケ、野球、アメフトが発展したのは19世紀後半~20世紀、行き過ぎた商業主義への反省から、規制と改革を進めている時代でした。よって、アメリカ型スポーツにもその精神が反映されています。


次第にスポーツは人々の為の「公共財」としての役割を果たしていきます。
移民国家のアメリカは、「文化的独立」と「人為的集団統合」が宿命づけられていました。

その社会的要請に対して、「平等で実力主義」という特徴を持つスポーツは、「民主主義」のシンボルとして大きな役割を果たしていきます。

またスポーツはプロスポーツフランチャイズや大学スポーツを通じて、町づくりや都市ごとのアイデンティティ確立に生かされ、人々にとってますます欠かせないものになってきます。

しかしその一方で、最近はスポーツはビジネスとしての側面が大きくなりすぎてしまい、行き過ぎた実力主義による才能の使い捨てや、商業主義が新たな搾取の構造を作り出しています。
それにより、公共財・民主主義のシンボルとして発展してきたスポーツの良さを圧迫し、アメリカ型スポーツの発生時に嫌悪していた「商業主義」に向かってしまっている。

スポーツビジネスに関わる者は、ビジネスだけでなく、(自分らが関わっていることの)文化的な役割の大きさを自覚しなければならない。また、避けることの出来ない搾取の構造について理解し、批判的な検証を常に行わなければいけないと筆者は主張しています。

アメリカではスポーツ、民主主義、地域社会の三者が結びついてきた一方で、スポーツ、ビジネス、メディアの三つも結合してきた。これら二種類の連関のバランスをスポーツビジネスが見失うことは、アメリカのスポーツの持つ公共財としての長所を消し去り、アメリカ型競技理念に逆行する金ぴか時代的状況へと退行し人為的集団統合というこの国の究極の目標からも遠ざかることにもなりかねない。スポーツビジネスは、商業主義につきまとう搾取の構造についてより強く自覚するとともに、ビジネス以上のものに自分たちが関与していることを忘れてはならないのである。


もはやスポーツビジネスは、この国に欠くことの出来ない娯楽を提供する立場にある。プロスポーツ能力主義や地域貢献・社会貢献は、この国を動かす重要な歯車となっている。それだけに、スポーツの動向を絶えず批判的に検証していく姿勢が、競技を運営していく側にも、求められている。(
p.184

上記の箇所に筆者のメッセージが集約されています。

オリンピックやワールドカップが世界中に注目されるイベントであるように、スポーツが社会に与える影響は他と比較にならないほど大きいです。
それはスポーツがビジネスという側面だけでなく、元々の文化的な側面を持っているからです。
そしてまた、その影響はインターネット・グローバル化SNSを通じて日増しに大きくなっています。

この本を手に取った理由は、単純に私がアメリカ発祥のバスケが好きだからです。1891年にYMCAYoung Man Christian Association)の教師ジェームズ・ネイスミスによってバスケは発明されました。バスケの誕生について、ダーヴィン進化論と繋がっているという洞察は非常に面白かったです。ダーヴィンの進化論の影響によって、キリスト教福音派は2つに割れ、存続の為に世俗化した一派が「適者生存」から外れてしまった人々にキリスト教の精神を広めるために、健康を増進を謳い設立したのがYMCA(Young Man Christian Association)でした。

本書はアメリカにフォーカスされていますが、
グローバルな世界において、これからスポーツの果たす文化的役割がどんどん大きくなっていくと私は思っています。
その時に本書で上がっているトピックのように、その文化的役割とスポーツビジネスがどのように関わっていくかは今後の大きな課題に見えます。

アメリカンスポーツが好きな方には勿論、
スポーツビジネスに興味のある方にも、是非読んでほしい一冊です。